皆様の熱い声援に応え、たくさん書いてきたのでもうep.いくつか分からなくなってきました。いつもありがたいお言葉を頂き、感謝しております。
つい先日、ホーミーが上達した高弟Sは師匠にテレビ電話をかけました。
「ホーミー、うまくなったよ。聴いて。」
「おう、いいよ。」
いつもオンラインレッスンをしている師匠の部屋に、電話を通しても余りある美しさを湛えた奇跡の歌声が響き渡ります。
「上の音の高さが変わったの分かった?」
「分かったよ。良い感じになったね。」
「ありがとう、今度みんなの前で披露するよ。」
「いいよ。」
「さっきからガサゴソやってるけど、何やってるの?」
「最近また筋トレを始めよう思って、ディップスバーを買ったんだよ。」
師匠は嬉しそうにそのバーを段ボールから取り出しています。
あれ、おかしいな、俺の美声に酔いしれて、手を止めるのが普通だろ。
自身が成長したことで驕り、高弟と得意げに名乗り続けてきたこともあるのでしょう、高弟の心に
不満の炎が広がっていきます。数分の間は自分の立場を弁えて世間話を続けましたが、その業火は理性の檻を飛び出してきました。
「まだ終わんないの?ガサゴソしすぎだよ。」
「違うよ。俺が作業してるところにSが電話をかけてきたんだよ。」
ざーっと水が浴びせられ、怒りの炎が消えていきました。憑き物が取れたようにすっきりとした心になっていきます。
師匠はわざと作業を続け、険しく大きな滝となることで、修行を授けて下さったんだ。
高弟の心に虹が架かります。
ありがとう。