今日も昨日のお話の続きで「美尻」から始まった日本語の連濁(れんだく)についてです。
基本的に日本語の複合語では後ろの語の頭が濁るという話でしたが、「美形」や「美肌」のように濁らない場合もあります。どんな条件の語が濁らないかというと、
(1)和語以外の語では基本的に濁らない
(2)後ろの語の中に濁点が含まれる場合は濁らない(ライマンの法則)
他にも連濁が起こらない条件もありますがとりあえずこの2つに注目してみます。
「美形」の場合はそもそも和語ではなく漢語(もしくは和語だとしても音読みなので漢語に準ずるもの)なので「びげい」とはなりません。
美肌に関しては「美」は音読みでも「肌」の部分は和語でしょうから「びじり」のように「びばだ」になってもよさそうなのですが、上の(2)の条件が当てはまります。「はだ」にはそもそも濁点が含まれますからこれ以上は濁点が増えないのです。
そう考えてみると「美尻」の「しり」は和語であるし、濁点もそもそも含まれないので上の条件を満たさず「びじり」と読むのが自然な感じがします。(ただ上の条件以外にも連濁が起こらない条件はありますし方言などのことも考えると完全に言い切ることができません。「美」が漢語で「尻」が和語の合成語(重箱読み)というのは気になります。それでも「目尻」(めじり)などの和語にならった読み方というところでしょうか。)
この辺りで美尻の濁点問題については一度終わりにしますが、最後に1つ比べてもらいたい言葉があります。何年か前の大学の授業で濁点についての例として出された言葉ですが、遊び程度に少し考えてみてください。
「偽狸汁」
(a)にせたぬきじる
(b)にせだぬきじる
偽狸汁なるものが実際に存在するかどうかは置いておいて、なぜ(a)と(b)というような読み方の違いがでるのでしょうか?意味の違いがあるのでしょうか?
なにか気づいたことがある方はレッスンの際にでも考えをお聞かせください。