東大生活物語 第二話「テント列タイムアタック」

2020/09/11
東大生活物語 第二話「テント列タイムアタック」
今日もなんだか暑い日ですが、秋は確実に深まってますね。すぐにこの暑さが貴重になるのでしょう。僕の中では夏の終わりが一番感情に深く入り込んで来る季節です。水泳部出身というのもその一員かもしれませんね。

そういえば、夏の終わりの学校のプールでコウモリが一匹泳いでいたことがあります。水を飲もうとして水に飛び込んでしまったのかもしれませんが、やろうと思えば泳げるものなんですね。無事プールサイドまで辿り着いていました。

そう、想像できることはだいたい可能なんですね。無理だと思っても不可能ではないことが世の中にはたくさんあります。

みなさんは無理だと思って諦めてしまった望みなどはありませんか?

コウモリから話が大きくなりましたね。。

どうでもいいですが東大生活物語第二話の始まりです。

前回の話↓



さて大学一年生は授業が始まる前にイベントてんこもりです。3月末には諸手続きをする日が一日設けられていたのですが、かなり強く印象に残っているのがその手続きが終わった後に新入生が遭遇する「テント列」という行事。東大名物だそうです。

諸手続きを終えた新入生は1号館という建物の裏手の出口から外に出るのですが、そこにはなんと大量の在校生とたくさんのテントが待ち構えているのです。道は1本しかないのでその人混みを抜けて駅の方に帰らなければならないのです。

そこで何をしているかといえば部活とサークルの勧誘。無数のサークルのメンバーが新入生を勧誘しようと待ち構えているのです。

(これをどうやって抜けるんだ。。サークルには入らないし困ったな。。)

どう考えてもサークル活動に費やす時間がない僕にとってはサークルの勧誘はお互い時間のムダ。どうやって切り抜けようかと思っている間にすでに目の前の道は鮮やかな水色のユニフォームを着たガタイのいいお兄様方で塞がれています。

東大アメフト部WARRIORSです。

気がついたら数人に取り囲まれていました。通ろうと思っても道がありません。

「お兄さん体格いいね。アメフトとか興味ない?」

一人のアメフト部員が話しかけてきます。

「いやあ、でも水泳部の方に興味があるんですよね。」

僕は入りもしない水泳部の話で切り抜けようとします。

「じゃあ話だけでも聞いていこうか。」

と僕をテントの方に連れて行こうとします。

「いや、でも今日は急いでるんで。」

別に予定はありませんでしたが適当なことを言って歩き出します。すると目の前をすぐに3人くらいが塞ぎます。こうなったらもう体のぶつかり合い。思い切り押し切ろうとします。

「お兄さん、当たり強いね。やっぱりアメフトやりなよ。」

(いやいや、この歳で大学入ってアメフトはやらないでしょ。というかやっぱり年下に見られてるのか。。)

なんて思いながらぐいぐい押し合っている間に後続の新入生達が続々と僕の後ろにやってきました。そしてアメフト部の若者達が新しいターゲットに気をとられている間にスルスルっと人混みの間を抜けてなんとかアメフトエリアから脱出できました。一度テントの方に引き込まれてしまうと1時間くらいは出て来られないという話を聞いていたのでほっとしました。

しかし安心したのも束の間、次々にサッカーやバレーボールやラクロスなどの勧誘の群れが押し寄せてきました。ただアメフト部ほどのパワーはなく苦労はしましたがなんとか少しずつ進んでいけます。テント列も後半にさしかかると文化系サークルの割合が増えてきて勧誘も優しいものに変化していきました。普通にビラだけもらって歩いていけます。

そしてついにテント列が終わり、駒場東大駅に辿り着けました。通常であれば2分しかかからない道のりに40分費やしました。まあでもこんなことは大学生にでもならないと経験できないので貴重な良い思い出になりました。こんなに歓迎されてちやほやされるのは最初のこの時期だけですしね。

後で聞いた話によるとテント列を抜けるまでの平均時間は約2時間。長い人は5-6時間かかるそうなのです。それに比べると僕の40分はかなり短い時間だったよう。しかしこの後に出会うことになる同じクラスの女の子は25分という新記録をたたき出していたようです。どうやってそんなに短時間で抜けられたか本人に尋ねてみると、彼女は淡々とこう言い放ちました。

「ずっと大声で『通してください!!』と叫び続けたんです。」

シンプル...!!



To Be Continued...(毎週金曜日連載)