東大生活物語 第七話「パラレルワールドアホストーリー」

2020/10/16
東大生活物語 第七話「パラレルワールドアホストーリー」
今日は長男が近くのスイミングスクールの体験に行きました。プールサイドに着いた時にはドキドキし過ぎて泣いていましたが、その後は楽しく泳げたようです。一安心。11月からは毎週通うことになります。

さて今日は金曜恒例東大生活物語。物語というか細切れのエピソードになっていますが、まあ自由にやっていこうと思います。もう五年も前のことだと思うとぞっとしますね。当時20代だったのがもうすぐ30代も中盤。人生とは一瞬ですね。まあ全力で生きていこうと思います。

前回の話はこちら↓



東大には年2回学園祭があります。そのうちの一つが五月中旬に本郷キャンパスで行われる五月祭です。入学して割とすぐ行われるイベントです。

サークル毎に店を出したり、ステージ上でパフォーマンスを行ったりするのですが、一年生は全クラスがそれぞれ出店します。入学してから1ヶ月もしないうちから準備を始めるのです。

そんな五月祭準備中の出来事でした。本番の直前出店用のテントを組み立てるというので、本郷キャンパスにクラスの一部のメンバーが集まることになりました。集合場所は赤門前。一年生が通うのは駒場キャンパスなので本郷は滅多に行くことがない慣れない場所でした。だからわかりやすく赤門前集合。

僕は集合時間の少し前に着いたので赤門前でのんびりクラスメイトを待っていました。6〜7人が集まるはずでしたがまだ誰も来ていない様子。「早く着き過ぎたな...」と思いふと横の方に目を向けると5メートルくらい離れた所に同じクラスの女の子のMがいました。

このM、以前書いたテント列(第二話「テント列タイムアタック」)を25分で通過した強者の女の子でした。名字の五十音順が僕と近く、スペイン語の授業でもすぐ近くに座っていたりしていたのでけっこうコミュニケーションを取っている子でした。

そんなMが赤門の前に立っているのを見て、「なんだ、もう着いてたのか。」と思いながら彼女の方に近づいていきました。そして彼女に、

「みんなまだ来ないね。」

と声をかけるとなんだかぽかんとして曖昧に頷いています。一瞬「あれ?なんだこの反応は?」と思いましたが、かまわず五月祭準備のことについてなど話し続けました。でも相変わらず彼女は曖昧な反応をしています。

まるで初めて会ったかのように。。

(あれ、授業中もけっこう話してたのに顔忘れられちゃったのかな...?)

まあまだ入学して一ヶ月半、みんながみんなクラスメイトの顔と名前を覚えているわけでもないしお互い話したこともない人同士も多々います。ただ僕は28歳学生という割と珍しめの生き物だったので周りの人は自分のことを覚えてくれていると思っていました。

(相手が自分のことを覚えてくれている、なんてのはともかく傲慢な考えだったんだ。。)

など若干気持ちが折れかけているところに後ろから声をかけられました。

「こうきさん」

振り返るとクラスメイトのGという男の子でした。少し前に赤門前に着いていたようです。そして彼は僕にこう言いました。

「こうきさん、それMじゃないっすよ。」

(え..?)

(Mじゃない...?どういうこと...?)

(スペイン語で隣にいるMじゃん。。)

混乱しました。Mと話していたのに、彼女はMじゃないという。よくわかりません。そしてGは続けました。

「それMの双子のYっすよ。」

(ふ、ふたご...?)

そう、聞いてみるとMには双子の姉妹のYがいたのです。しかもすぐ隣の文三八組(僕は文三七組)。なんと双子で東大受験して二人とも合格したのです。言われてみればそこに立っていたMと瓜二つのYは服装や髪型の感じが少しMとは違います。

(まさか双子がいたなんて...!)

急に初対面のYにひたすら話しかけていた自分が恥ずかしくなりました。でもおそらくYも今までの人生でMに間違えられたことがたくさんあったのでしょう。たぶん間違えられてると気づいていたのでしょうが落ち着いていました。間違えてしまってごめんなさい。

その後だいぶ遅れて本物のMが到着しましたが、二人とも本当にそっくり。でもよくよく話してみると性格はだいぶ違います。でもやっぱりそっくり。

さて、それ以来キャンパス内で二人の内のどちらかとすれ違う時、毎回「どっちだ?!」と瞬時に判断して的確な対応を取る、そんなトレーニングが続きました。


おかげさまで観察力と判断の瞬発力がつき今の仕事に活かせています(笑)


To Be Continued...(毎週金曜日連載)